宮川内科・胃腸科医院
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Dr宮川の注目コーナー

  ピロリ菌について@
「ピロリ菌」という言葉を最近よく聞きますね。
今回は2回に分けてピロリ菌について整理したいと思います。

*ピロリ菌とは?
 正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ菌」で、胃の粘膜に住みつく細菌です。

*ピロリ菌はどうやって感染する?
 感染経路についてはまだわかっていないことが多いですが、5歳未満の幼少期に口から体内に菌が入ることで感染すると考えられています。ピロリ菌に感染した大人から小さい子どもへ口移しで食べ物を与える場合も感染する可能性があると考えられています。一度感染すると自然に消滅することは稀です。

*日本人はどれくらいの人が感染している?
 日本人全体では約半分の人が感染していると言われています。年代別では、40代以降で多く、40代で35%前後、50代以降になると70〜80%の人が感染していると言われています。一方、20歳未満の若年層では、ピロリ菌保有率は10%を切っています。

*なぜ40代以降で多い?
 戦後まもない頃は、上下水道がまだ十分に完備されておらず、汚染された井戸水などをそのまま飲料水として使用しており、そのような時代に幼少期を過ごした人たちは保菌率が高いと考えられています。

*ピロリ菌が胃にいるとどうなる?
 ピロリ菌が作り出す酵素ウレアーゼと、胃の中にある尿素が反応してアンモニアが作られ、そのアンモニアが胃の粘膜を傷つけます。また、ピロリ菌が作るvacAという蛋白も胃粘膜の表面の細胞に穴をあけ、胃を傷つけます。こういった悪さをするピロリ菌をやっつけようと体の中で生体防御反応が起こり、白血球が胃粘膜に集まり炎症を起こし、さらに胃粘膜は傷つきます。

*ピロリ菌がいることでどんな病気になる?
 ◎慢性胃炎
 ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に炎症がおこり、感染が長引くと慢性胃炎になります。この状態では自覚症状はないことが多いです。慢性胃炎が続くことで以下のような病気になります。

 @萎縮性胃炎
 慢性胃炎が長く続くと、胃液を分泌する細胞は減っていき、胃粘膜は萎縮していきます。萎縮性胃炎になると、胃液が十分に分泌されないので食べた物は消化されにくくなり、食欲不振や胃もたれといった症状が出てきます。萎縮性胃炎になると胃がんになりやすくなります。

 A胃潰瘍・十二指腸潰瘍
 胃・十二指腸潰瘍のほとんどがこのピロリ菌によるものと考えられています。実際ピロリ菌のいる潰瘍患者ではピロリ菌を駆除することで潰瘍がほとんど再発しなくなります。

 B胃がん 
 世界保健機関(WHO)は、「胃がんの80%はピロリ菌感染が原因で除菌によって胃がん発症を30%〜40%減らせる」との報告書をまとめています。胃がんは日本人が最も多くかかるがんです。男性はおよそ9人に1人、女性はおよそ18人に1人が一生のうちに胃がんにかかると診断されています。若年層のピロリ菌保有者に対し、早期のピロリ菌除菌が胃がんを撲滅する一番有効な方法かもしれません。

 ※ピロリ菌はその他にも、胃ポリープや、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)、特発性血小板減少性紫斑病とも関係があります。


(平成29年11月30日)

  ピロリ菌についてA
*ピロリ菌の感染を調べる方法は?
 感染を調べる方法には、内視鏡を用いて胃の組織を一部とり検査する方法、血液検査により抗体を調べる方法、尿素呼気試験と言って吐き出した息から感染を調べる方法、便を採取して調べる方法があります。当院では、主に尿素呼気試験により検査をしています。

*尿素呼気試験ってどんな方法?
 ※検査当日は、飲食せず来院していただきます。
 ※タバコをすわれる方は検査2時間前より禁煙していただきます。
 @大きく息を吸い、5秒間息を止めた後、専用の袋に息を吐き出します。
 Aピロリ菌が反応する薬1錠を100mlの水で飲みます。
 B5分間、左側を下にしてベッドに横になります。
 C15分間椅子に座って待ちます。
 D大きく息を吸い、5秒間息を止めた後、専用の袋に息を吐き出します。

*尿素呼気試験は保険診療でできる?
 半年以内に内視鏡検査を行った人で、胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された人は保険診療で検査・除菌を行うことができます。
※半年以内に内視鏡検査をせず検査・除菌を行う場合は自費診療となります。

*なぜピロリ菌の除菌が推奨されているか?
 ピロリ菌が萎縮性胃炎の原因となり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こしやすくなります。さらに、萎縮性胃炎の一部が胃がんに進行していきます。そのため、若いうちのピロリ菌除菌が推奨されています。

*ピロリ菌陽性の場合、除菌はどうやってする?
 @抗菌薬2種類と胃薬を1種類、1週間続けて内服します。
 A飲み終わるころ受診していただき、副作用などおこっていないか診察します。
 B内服終了後8週間以降後に、除菌が成功したか確認するため、再度尿素呼気試験を行います。
 ※除菌が成功していなかった場合は、抗菌薬を1種類だけ別の物に変え、もう1週間薬を内服していただきます。

*除菌はどれくらいの確率で成功する?
 当院では、1回目の除菌で約90%、2回目の除菌ではほとんどの人が除菌に成功しています。

*除菌薬で副作用は起こらないの?
 副作用として以下のような症状が現れる可能性があります。
・下痢・軟便
・味覚異常:食べ物の味をおかしいと感じるようになる・金属のような味を感じる
・アレルギー反応:発疹やかゆみを感じる(アレルギー反応が起こる可能性は2〜3%程度です)

*副作用が起こったらどうする?
 軽い下痢や軟便、味覚異常の場合はそのまま飲み続けてください。しかし、服用を続けている間に下痢や味覚異常がひどくなった場合は我慢せず、受診してください。発熱や腹痛を伴う下痢、アレルギー反応が起こった場合は、すぐに服用を中止し受診して下さい。

*除菌が終わったらもう安心?
 除菌が成功することでピロリ菌に関係する病気のリスクは減りますが、ゼロにはなりません。そのため、定期的に内視鏡検査を行うことをおすすめしています。


(平成29年11月30日)

  がん教育の推進について ----- 科学的根拠に基づくがん予防 その1
みなさん、日本人の死因で最も多いのは癌であることをご存知ですか?
なんと、国民の2人に1人が癌にかかり、3人に1人が癌で亡くなっているのです。
人ごとではありませんね。
癌対策を行うには、癌について正しい知識を身につけ、健康な生活習慣を行うことが重要です。
今回は、癌について勉強したいと思います。
その1では「癌の統計・癌の現状」を、その2では「癌予防のためにできること」、その3では「がんの早期発見・治療を行うためにできること」を見ていきたいと思います。

@癌による罹患数・死亡数の増加について
癌は、細胞の遺伝子が様々な要因により傷つき変化することが、時間とともに積み重なって発生してくるものと考えられています。
そのため、癌の最大のリスク要因は加齢といえます。
日本では今、高齢化が進んでいます。
この高齢化が原因となり、癌の罹患数・死亡数は増加しています。(2015年の癌死亡数は1985年の約2倍)
しかし、一概に癌の罹患数の上昇は高齢化だけが原因とは言えません。
癌の罹患数は、人口の高齢化の影響をのぞいた年齢調整率で見ても、1980年以降増加しているのです。
その一方、早期発見や治療の進歩により、癌の生存率は多くの部位で上昇傾向にあります。

A癌になりやすい部位について(高齢化などの年齢構成の変化の影響を取り除いた部位別癌年齢調整罹患率による)
〈男性〉
2015年において、男性では胃癌が最も多く、次いで大腸癌、前立腺癌、肺癌の順となっています。
しかし、近年のピロリ菌保有率の低下もあり、胃癌の罹患率は低下傾向にあります。
逆に前立腺腫瘍マーカーによる検診の普及により、前立腺癌の罹患率が増加しています。
死亡率は、肺癌が最も多く、次いで胃癌、大腸癌の順となっています。
〈女性〉
女性は乳癌の罹患率が最も高く、次いで大腸癌、胃癌、子宮癌、肺癌の順となっています。
乳癌、子宮癌が顕著に増加しており、胃癌は減少傾向にあります。
死亡率は大腸癌が最も多く、次いで肺癌、乳癌の順となっています。

その2に続きます。


(平成30年3月19日)

  がん教育の推進について ----- 科学的根拠に基づくがん予防 その2
その2の今回は癌を予防するためにできることをお話します。

*癌の1次予防(癌になる人を減らすためにできること)
 
《喫煙:タバコは吸わない。他人のタバコの煙は避ける》
喫煙は肺癌をはじめとする種々の癌のリスク因子となっています。
能動喫煙により肺癌になるリスクは男性では約4倍、女性では約3倍に上昇します。受動喫煙によっても非喫煙者の肺癌になるリスクは約3割上昇すると報告されています。

《飲酒:節度のある飲酒をする。》
多量の飲酒は癌になるリスクを高くします。特に食道癌、大腸癌と関連が強く、女性では乳癌のリスクが高くなります。
飲酒する場合は1日アルコール23g程度までにすることが良いとされています。
※アルコール23gは、日本酒1合、ビール 約500ml、焼酎 原液で120ml、ウイスキー 原液で60ml、ワイン250ml相当です。

《食事:食事は、偏らずバランスよく。塩分は最小限に、野菜や果物不足にならないように。》
〔塩分摂取について〕
高濃度の塩分は、胃癌のリスクを高めると考えられています。塩分を抑えることは、高血圧や循環器疾患のリスクの低下にもつながります。
一日の塩分摂取量を、男性は8,0g未満、女性は7,0g未満にすることが推奨されています。
〔野菜や果物摂取について〕
野菜と果物の摂取量が少ない人ほど癌のリスクが高いとの報告があります。特に、食道癌・胃癌・肺癌において関係があるとされています。
野菜をとることは生活習慣病の予防にもなるので、1日350gの野菜を摂取することを目標としたいですね。

《日常生活を活動的に過ごす》
身体活動量が多い人ほど、癌の発生リスクが低くなるという報告があります。
厚生労働省によると、18歳〜64歳では、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと」、それに加え「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うこと」、65歳以上では「強度を問わず身体活動を毎日40分行うこと」を推奨しています。
運動は心疾患のリスクも低くするので、今より少しでも体を動かす時間を増やしていきたいですね。

《適正体重を維持する》
癌を含むすべての原因による死亡リスクは、太り過ぎでも痩せすぎでも高くなるとの報告があります。
健康でいる為には、男性はBMI21〜27、女性はBMI21〜25になるよう体重管理することが重要です。
※BMIとは肥満度を示す指標で、体重〔kg〕÷(身長〔m〕×身長〔m〕)で計算できます。

《感染:肝炎ウイルスやピロリ菌の検査と退治》
日本人の癌の原因として、女性で1番、男性でも2番目に多いのが「感染」です。
B型・C型肝炎ウイルスと肝癌、ピロリ菌と胃癌、ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌の関係が有名です。
いずれの場合も、感染すると必ず癌になるわけではありません。感染の状況に応じた対応をとることで癌は防げるので、定期的な検診をうけ感染の有無を確認したいですね。

上記にあげたことは、癌を予防するだけでなく、生活習慣病等の予防にも繋がります。
健康に楽しく過ごしていく為に、少しずつできることをとりいれていけたらいいですね。

その3に続きます。



(平成30年3月19日)

  がん教育の推進について ----- 科学的根拠に基づくがん予防 その3
その3の今回は、癌を早期発見・早期治療するためにできることをお話しします。

*癌の2次予防(癌の早期発見・早期治療)
1次予防でどんなに気をつけても、100%癌を予防することはできないので、定期的な癌検診は必要です。
無症状の状態で発見された癌は、進行癌が少なく早期に発見できることが多いので、無症状でも定期的に検診を受けたいですね。
現在行われている対策型癌検診(公的な予防対策として行われる検診)は、市区町村で行われる住民検診、職場で行われる職域検診があり、対象年齢や検診間隔はそれぞれ異なりますが、胃癌・大腸癌・肺癌・子宮頸癌・乳癌の5種類が行われています。
住民検診は、市区町村より案内が送付され、委託を受けた医療機関で検診を受けることができるものもあります。
当院でも、大腸癌検診(便潜血検査、必要時大腸内視鏡検査)を行うことができます。
またその他にも、胃カメラ検査、特定健診、前立腺癌検診、肝炎ウイルス検査、結核検診等も行っておりますので、お気軽に御問い合わせください。


(平成30年3月19日)

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